財産の使い込みを追及したい方
親と同居していた兄弟の遺産の使い込みが発覚した!財産の使い込みでお困りの方へ
目次
よくある使い込みの事例
弁護士への相続のご相談で、特に多くあるのが
- 「兄弟から遺産の目録が届いたけど、思っていたよりもやけに預金が少ない…」
- 「親の預金が生前に同居している兄弟に使い込まれていた。」
というご相談です。
親の介護をしていた、もしくは親と一緒に住んでいた兄弟が、無断で親の預金の引き出しを行い、これを自分のために使い込んでいたことが発覚したというのが典型です。
実際に、当事務所でご依頼されたケースでは、以下のような内容(エクセルの表)のように、約4年間にわたり、1223万円のもの金額が、被相続人の母親名義の預貯金から払出がなされていた事が判明しました。
これは、他の相続人が、ゆうちょ銀行や地場の銀行の取引明細書を5年分取り寄せて、払出の明細を調べていたら、判明したものです。ちなみに、母親は、この払出の時期には、自分で預貯金の管理をしておらず、相続人の1人の末娘のCさんに任せていたのです。
Cさんは、最初は、これは、母親のために払い出して、母親が使ったと主張していました。しかし、姉のA、Bさんが、お母さんは、これまでの生活からして、1か月に10万円も生活費に掛かっていないので、年間に300万円もかかるはずがないと、問い詰めていたら、Cさんは、お母さんの生活費以外に、残りは自分がお母さんからもらったものだ、という話に変わりました。
お姉さんたちは、母親がCさんだけに、そんな多額なお金を4年にもわたって、あげるわけがないと思っていましたが、お母さんが亡くなっている現段階で、Cさんが母に無断で取ったという証明は難しいところです。
そこで、A、Bさんは、Cさんが母の預金から勝手に下ろして取った、つまり不法行為として、母のCさんに対する損害賠償請求権の相続人として、Cさんを訴えるより、お母さんの遺産分割で、Cさんが払い出した額を、特別受益として、判断してもらう方法の調停の主張で話し合いを進めました。
これにより、Cさんも、特別受益になることは争わず、金額について全額が特別受益となることは否定していましたが、調停委員の説得もあり何とか話し合いは成立しました。
相続預貯金の使い込みが発覚した場合に何ができるのか
相続財産である預金が親の生前に相続人の一人によって引き出されていることは、上記の事例のように珍しいことではありません。
相続開始前に親以外の者によって預金が引き出された場合、それが親の意思に基づかずに行われたものであれば、相続人は、引き出しを行った人に対して不当利得、不法行為としてその返還を求めることができます。
厳密にいうと、亡くなった方の意思に反して預貯金を引き出すと、法律的には不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権という権利が発生し、それを相続人が相続によって承継することになるのです。
相続預貯金の使い込みに対する返還請求の手続選択
それでは、相続人が返還請求をするには、どのような手続を取ればよいのでしょうか。
まずは相手方と交渉を行うことが考えられます。相手方に引き出しについての説明を求め、その説明が合理的かどうか、証拠があるかどうかを確認します。
相手方が説明をしない場合、不合理な説明しかしない場合は、請求額を明確にして支払いを求めます。
相手が支払いに応じない場合や、交渉で進めるのがふさわしくないと考えられる場合には、裁判所に訴訟を提起することを検討します。
どの裁判所に訴訟を起こすのかというと、原則的には「地方裁判所」で行います。
もっとも、家庭裁判所における遺産分割調停で、使い込みの問題を併せて協議していく場合もあります。使い込みの金額がさほど大きくない場合や相手方が使い込みを認めて話し合いに応じる見込みがある場合には、あえて訴訟を提起せずに、遺産分割調停の中での解決をはかる方法も考えられます。
交渉をしてみるのか、訴訟の提起を行う必要があるのか、調停内での解決を図るのかについて、相手方の態度や証拠状況に基づき検討する必要がありますので、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
どのような資料が必要か
使い込みが疑われ、裁判による解決を図ることとした場合、引き出しが相手方によって無断で行われたことを裏付けられるよう、また使い込みの金額を確定するため、証拠となる資料を集める必要があります。
それでは、どのような資料があれば裁判所に返還請求を認めてもらえるのでしょうか。
使い込みが疑われる金融機関の口座の通帳・取引履歴や払戻請求書等
まずは、使い込みが疑われる金融機関の口座の通帳を確認して、いつ・いくらの預貯金がどこで引き出されたのかを確認することが不可欠です。
通帳を手に入れられない場合には、その金融機関で取引履歴を取得することで通帳に代えることもできます。
もう一つ、取り寄せると有益なことが多いのは、窓口で引き出しが行われている場合の払戻請求書等の資料です。窓口で手続きを取った人の筆跡が残っていたりするため、誰が払戻手続を行ったかで揉めている事案などでは、大変有益な資料となります。
親の生活状況や認知症の程度を証明できる資料
通帳や取引履歴から、多額の預貯金の引き出しが確認されたとしても、それが親本人によって、または親に頼まれた誰かによってなされた場合には、「使い込み」があったと認めてもらうことができません。
つまり、使い込みに対する返還請求が認められるためには、引き出しが親の意思に基づかないことを証明しなければならないのです。
この点については、引き出しがなされた当時の親の意思能力がどの程度のものだったのか、身体状況がどのようなものだったのかが重要になります。
これらを確認するのに有益なのが、親が入院していた医療機関のカルテや医療記録、入所していた施設の介護記録等です。
これらの記録に、引き出しがなされた当時、親が外出できるような身体的状況でなかったり、判断能力がないあるいは著して低下していることが確認できるような場合には、その時期における引き出しが親本人の意思とは無関係に引き出された可能性があることを推認させることができます。
また、親が重度の認知症であったことが記載されていた場合には、引き出しが親の意思に基づくことを否定する重要な材料となります。
使い込みが疑われる事案は、お手持ちの証拠で立証ができているのか、どのような証拠を収集することができるのかといった点において、またいかなる手続を選択すべきかという点において、法的に難しい検討が必要です。相続財産の使い込みが疑われるような場合は、弁護士からの視点でのアドバイスが重要ですので、一度当事務所までご相談ください。
相続人の1人Aさんが、被相続人(母親)が亡くなった当日に、銀行に行き、母親がまだ生きているものとして、1000万円の定期預金を解約したケースがありました。Aさんは、母親の印鑑証明書を添付した委任状を持参して、いわば銀行を欺して払い出していたのです。
その事実は、相続開始時には分からず、相当時間が経過して判明しました。そのために、他の相続人が遺産分割の調停を起こしました。
Aさんは、他の相続人に、自分の委任状を偽造したことも、勝手に払い出したことを隠していたことも謝罪もせずに、この1000万円は、母親の葬儀や今後の長い間の母親の法要の費用に使うように、母親から言われていたので、この1000万円は死後事務の費用として、自分が取得して今後の法要の費用に使うものであるから、相続財産ではなく遺産分割の対象ににもならず、相続財産を勝手に取得したとしての損害賠償請求に応じる必要もないという反論をしてきました。
その上で、母親の遺言書が存在していたとして、遺言検認申立をして、遺言書提出してきました。
その遺言書には、「延命処置は一切不用です。自然死を望みます。なお残金は葬儀及び3回忌までの費用に役立てて下さい。」と記載していました。
当方は、遺産分割調停では、Aさんが払い出した1000万円は、相続財産ではないという主張をしていることもあり、調停を起こしたものの不成立となりました。
そして、依頼者である相続人が被相続人である母親の相続により取得できたはずの法定相続分である相続財産をAさんが侵害したという不法行為による損害賠償請求の訴訟を提起しました。
その結果、約半年後に、1000万円から葬儀費用と3回忌までの法要に掛かった費用を控除した残額の法定相続分を解決金として支払を受けることで和解が成立しました。
依頼者の方々は、Aさんの犯罪的な行為で銀行を欺して預金を下ろしてそれを隠していたことについて、非常に憤りを感じられており、裁判などで時間はかかりましたが、気持ちの上でも納得されて喜んでおられました。