遺言作成後のアフターフォローとして、安否確認高を行い齢者の危機を防いだ事例

相談に至った経緯(後日談)
依頼者は、以前当事務所で遺言書を作成した90代の女性である。遺言作成後も、依頼者との間には継続的な関係が続いていた。
ある時、弁護士の知り合いが、依頼者の自宅に弁当を届けに訪問したが、インターホンを押しても応答がなく、新聞が5日間溜まっていることも確認された。異変を感じたため、すぐに安否確認が必要ではないかと弁護士に連絡があり、弁護士は、安否確認が必要であると判断した。
弁護士から依頼者の娘にも連絡を取ったが、前日には娘が警察に連絡したところ、そのタイミングで依頼者と電話が繋がったという経緯があった。しかし、依然として自宅のドアは開けられず、事態を重く見た弁護士は、警察に知らせて窓ガラスを外部から破り、鍵を開けて部屋に入った。部屋に入ると、依頼者は台所で正座して動けない状態で、意識はあったものの、心身の状態は不安定であった。弁護士は、スムーズに警察との連携を取り、依頼者の状況を把握し、必要な医療的な対応(救急入院)を促すなど、事態の収拾に努めた。
弁護士の対応
安否確認の実行
遺言作成後の付随サービスとして、担当弁護士の関係者が依頼者の安否確認を継続的に行っていた。
異変を察知した際、直ちに依頼者の娘に連絡し、窓ガラスを壊してでも屋内に入って欲しいという娘の 依頼を受け、また警察への通報を同時に行い、弁護士が、依頼者宅に急行した。
警察との連携による事態の収拾
依頼者の自宅に入室する際、警察の立ち合いを確保し、刑事上のトラブル防止を配慮した。
依頼者が救急車の要請を断る状況であったため、警察官の説得で依頼者の健康状態を考慮して、救急車の手配ができた。
長期的な見守りの実現
遺言作成という法的な手続きに加え、依頼者の生活全般にわたる見守りサービスを提供することで、高齢依頼者の安全を確保する責任を果たした。
事件のポイント
遺言作成後のアフターフォローの重要性
本件は、遺言書作成という一過性の法的サービスだけでなく、その後の高齢者の生活支援や安否確認というアフターフォローが、依頼者の命に関わる危機を未然に防ぐ上で極めて重要であることを示す事例である。
専門家による日常的な見守りの価値
遠方に住む家族や親族に代わり、弁護士のような専門家が日常的な安否確認を行うことで、依頼者に安心感を提供できる。特に孤立しがちな高齢者にとって、このような継続的な関わりは不可欠である。
関係機関との連携
安否確認において、警察や救急などの関係機関との連携は必須である。弁護士が立ち会うことで、迅速かつ適切な判断と手続きが行われ、依頼者の安全を最優先した行動が可能となった。

■ 昭和44年 山口県立大嶺高等学校卒業
■ 昭和48年 神奈川大学法学部卒業
■ 昭和50年 株式会社判例時報社入社
■ 昭和53年 司法試験合格
■ 昭和54年 株式会社判例時報社退職
■ 昭和54年 司法研修所入所
■ 昭和56年 司法研修所卒業
■ 昭和56年 弁護士登録(埼玉弁護士会)
■ 昭和58年 山口県弁護士会に登録変更
■ 昭和58年 下関市に「若松敏幸法律事務所」開設
■ 平成17年 山口県弁護士会会長
■ 平成4年~現在日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会 委員



